http://www.moma.org/visit/calendar/films/947

これですよこれ。
新宿のおなべワールドを描いた衝撃の一作。これでやられたんだわ私・・・。

イラニアンスタイルの離婚のあとはHold me tight, let me go。
これはすごかった。心理的・精神的トラウマを抱えて問題行動を起こしている子供たちのためのspecial education を施しているこの学校。子供たちは親から離れてここに寄宿しながら社会規範に沿った行動を取得していく。

驚くのは職員の数。子供40数人に対して大人が100人以上。子供1人あたり2人以上の大人が対応できるような仕組みになっている。芝生のきれいな広い庭に大人に手をつながれて歩いている子供。
一見ほほえましい光景だけどそのあとにすさまじいクラスの中の出来事や子供たちの行動が出てくる。
メインは3人の男の子。子供は最初ここに来ると大人が付きっ切りで手をつなぎ、辛抱強く対応をしていく。心理的・精神的なネグレクトを家庭内で受けて育った子供は、感情の起伏が激しく、同時にその感情の反応がエキサイトするか、激昂するかの二つしかない。

激昂の理由には、傷ついた、悲しい、寂しい、わかってもらえない、怒り等それらの感情の表現と理解が許されていない家庭に育つと、子供は興奮か激昂の二つしか知らないことになる。

中のいい子供同士の喧嘩はすぐにエスカレートし、7歳8歳の子供のあいだでナイフで相手の友達を刺すなどの事件も起こる。
なぜなら感情のバラエティが少なく、感情=行動になってしまう。

感情と行動の違いを教えるために、小さなことで激昂する子供を二人の大人を取り押さえるシーンもある。職員は自分の感情に任せて行動をしないように訓練されている。それでも小さな子供が取り押さえられるのを逃げるため必死の肉体的な抵抗・殴るけるたたく、をよけながら、子供たちの罵倒に冷静に対処しながら、子供たちが絶え間なく吐きかけるつばを浴びながらも、子供が落ち着くまで取り押さえは続く。それでも職員も人間なので、途中にほかの職員にバトンタッチをして、髪や顔についたつばをぬぐい、おそらく落ち着いたあとカウンセリングを受けるだろう。新しく来た子供には職員がグループになり、家庭環境・バックグラウンド・対応策などを話し合う。

時には隔離部屋のような、でも部屋中にわやらかいクッションと動物の絵の描かれた部屋につれていかれ、職員は子供が落ち着くまで腕を持っている。

喧嘩の末にほかの子供を刺した子が、カメラに向かって
「僕のママがダッドを刺したんだ」
という。

その子が父親が死んだというニュースを受け止めたとき、泣きわめき暴れながら、抑える職員に"Let me go!" と叫ぶシーンはとても悲しい。
二人の職員が体ごと抑えていた彼も、次第に落ち着きを取り戻し、そのうち一人の職員が抱きかかえることにかわり、そのうちその抱きかかえていた職員と遊ぶようになる。

子供たちは自分たちがどんなことを言っても何をしても、しかりながら、自分のしたことに対して責任を持つということを具体的に学びながら、大人に対して、自分の感情と行動に対して責任を持てるようになる。

あるシーンで、2人の職員に押さえ込まれながら罵倒されている職員同士で、
「そういうことをいわれてどうおもった?」
「すごく悲しかったし傷ついたわ。」
「チャーリー、あなたが怒っているからって、ほかの人や自分を傷つけていいって言うことではないのよ。誰かにいやなことを言われたら、傷つくし、いやな思いをするのは誰でも同じだけど、だからといって相手や自分を傷つけていいって言うことにはならないのよ。」
と説明する職員。
(そのあいだも子供を抑えているし、子供はbitch! filty cunt! you cunt!などという罵倒する言葉を浴びせ続けている。)


入ってきた当初は自分の感情を暴力という行動で表現することしかできなかった子供たちが次第に柔らかい表情になり、かわいくなり、泣けるようになり、自分の感情を話せるようになり、ほめられて恥ずかしそうに照れたり、家庭に帰る際に分かれるのが悲しくて、ないたりするようになりその気持ちを職員と話し合ったりできるようになる。

希望のもてるエンディングだったけど、この小さないたいけな子が怪物にならなくては生きていけない環境を作った彼らの親は変わってないのだし、その同じ家庭によくなった子供をいつかは戻さなくてはいけないのは実はとてもつらいのではないかと思った。

同時に自分がその子供たちにかぶる。

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